archivist_kyoto の雑記帳

ネタを考えるための雑記帳です。 NO HUG NO LIFE

日本書籍出版協会文芸書小委員会の要望書についての極私的メモ

◯前口上

(これ、2016年11月26日にFBにエントリしたもの。本人がまったく覚えてなかった上に、例の文春さんの文庫本提案があっても大きな状況はあまり変わってない感じなので、こちらに転載してメモとしておきます)

 

〇考える対象
一般社団法人 日本書籍出版協会 文芸書小委員会発
公共図書館館長各位宛
公共図書館での文芸書の取り扱いについてのお願い」(2016年11月22日)
http://toshokanron.jugem.jp/?eid=129
(書協のサイトには載ってないので、薬袋秀樹氏のブログのテキストを掲載)

 

〇口上

・例の件について、少し考えるところがあるので昼休みにだーっと打った。めずらしく長文を投稿してみる。

・あくまで僕の読み方を提示したもの(当たり前)。ただ、何人かの方の感想を拝見したりしてて気がついたことはあります。

・考えるところはあるんだけど、もちろん結論はない。あるわけない。そしてまとまってないです。

・かつ、ご叱正ください。

 

◯前提

・あくまでも「出版文化の継続発展」のための配慮と助力を求める要望であること。

・文芸書小委員会のものであることに注目。なので?議論の対象は文芸書に絞っている。

・宛は「公共図書館 館長 各位」で団体あてではない。団体としては直接の対応のしようがないし、すべきでもない。動きに対するコメントとかはありにしても。

・もともとは2016年早期に出すという話だったような。内情は知悉しないがいろいろ議論があったのかも。

・みんなが忘れていると困るのでリマインドしておくけど、2015年の日本図書館大会以降、以下の2つの動きがある。書協はそれなりに手順を踏んで礼を尽くしている。

・「公共図書館資料購入費増額に向け、出版界も応援します」(2016/2/24)
 http://www.jbpa.or.jp/pdf/documents/shiryouhizougaku.pdf

・【文部科学大臣宛提出文書】「図書館資料購入費、図書館整備充実に関わる経費について(要望)」(2016/3/24)
http://www.jbpa.or.jp/p…/documents/toshokanzougaku201603.pdf

・なおなお、今回の件の直接のスタートになってる2015図書館大会でのつぶやきなどは以下を。 もちろん、大会記録などのまとまった記録も参照して欲しい。
 http://togetter.com/li/887535

 

◯内容

・出版対図書館という図式は慎重に避けようとしている。図書館大会分科会に参加した図書館関係者の声を紹介して「出版文化を支える同志」とも位置付けている。そう読んでみるとより受け止めやすいかと。

・しかしその上で上手なのは、まずは『2015年「図書館と出版」を考える 新たな協働に向けて』を読みましょう、話はそれからだ、という作り。今、たたき台がこれしかない以上そうかもしれないし、この土俵に乗りにくい、ということなら、早急に別の、それこそ反証可能性も担保された土俵を作らないと。

・何人かの方がひっかかってた「資料費不足等を理由にした、リクエスト上位の図書の過度の購入や寄贈を呼びかける図書館の存在」の一文は確かにわかりにくい。「資料費不足等」と後段がどうもつながってない。

・2006年の「これからの図書館像」を上げているのも上手。各地でこの方向を念頭に、あるいはこれ以前から取り組んでいるけど、それが全体の構造を規定するには至ってない。そしてイメージも変えられてない(これはどの業界でも同じだと思うけど、こういうの個々の現場の努力でどうなるものでもないけど、そこに妙に注力してしまう)。

・最後の部分、住民の要望はわかるけど、無制限に聞いては社会が成り立たないでしょ、という行政機構全体に対する問いが、無自覚にかもしれないけど実は投げかけられている。

 

◯突きつけられているもの

・いろんな反応はあり得るけど、じゃあ図書館側が省みてどうか、ということが僕には重要。

・書協は、(よりよい社会を実現する→)出版文化が大事→図書館も協力を、と来てる。だからこそ、前提として応援しますという呼びかけと文科宛の要望がある。

・図書館側こそ、よりよい社会を実現する、は目標なはず。その点では共通基盤があって、可能なことを探ると良いのでは。

・でも、これがイコール今の出版文化が大事、とは僕はならない。編集の力や多様な情報の保障や学知の発展や文化資源の保存は大事と思ってるけど、これが今の「出版文化の継続発展」で可能かは不明というか論証されてないのでは。「出版文化の次の段階への発展」ならまだわかる。

・ただ、公立図書館は2016年冬になっても「大量生産された紙の本」を「貸し出す」ということに最適化されているし、実際にリソースをそこに割いている。目立つ活動はうちも含めたくさんあるけど、予算と人員の配分を見る限りそうでしょう。

・かつ、図書館界が、貸出数(と来館者数)以外の主要なベンチマークを持たない限り、そりゃ個々の現場で貸出数の維持や増進に向かって努力してるように見えるし、実際そう。今までの努力と動向は受け止めつつ、「利用」とは何か、がそろそろ問われてもよい。

・真剣に新しい評価基準が欲しいし、なきゃ作らなければ。そうでないと資料保存や多様な社会活動への支援は出来なくなる。

・これも機会にして、これらをひっくるめてどうしていくか、ということを考えたい。そういう議論にならないと、目的なく後退し続けることになる。

 

◯たとえば「まともな電子書籍」という投げ返し

・一例として電子書籍とかで共同戦線張れないものか考えてしまう。まだアイデアないけど、今のままだと電子書籍はうまく行かないし、デジタルアーカイブも連動しそうなことは目に見えてる。

・「じゃあ、複本あんまり買わないから絶版になっている書籍のデータをください」という要請もありかもしれない。こっちの方が使い方があるかもしれないですよ。

・オーバードライブ導入して成功例になってるはずのカヤホガのフェルドマンもかなり苦労して現状にこぎ着けているようなので、そりゃ大変だろうけど、これを機会に考え始める人が増えるといい。