以下について、各所から情報をいただき、高知新聞でも過日報道があったところです。
www.pref.kochi.lg.jp
ということで、パブコメを提出しました。以下に全文を貼っておきます。
私は現在、慶應義塾大学文学部で教員をしております。専門は、文化施設の連携やデジタル化です。もともと高知県の出身で、今も親族が県内各所に在住し、私自身も仕事や私用で年に数回は高知に帰っております。以上の背景から以下の意見を提出します。
(1)本件はあまりにも情報が少なく、提案の妥当性を判断できません。適切な判断のためには、県議会総務委員会に提示した資料、各施設や公社等の状況のまとめなどの関連資料が必須と考えます。また、指針の変更によって得られる効果を明確に示す必要があります。適切かつ多数の意見を求めるための情報提示として、現状で十分とは考えらえません
(2)自律性向上団体に求められている「より高い付加価値を生み出すサービス」とは何でしょうか。この点を収益の側面からのみ検討しているなら問題です。「付加価値」は、各文化施設が蓄積してきた研究・展示・教育活動でしょう。高知の歴史や文化へのより深い理解も、もともとはこれらの活動によって培われたものです。
(3)さらに、防災・復興の観点からも文化施設の役割は重要です。例えば高知城歴史博物館等によって行われている地域連携の事業は、過疎化に対応する事業でもある一方、来るべき巨大地震の際に、高知の歴史や文化を守り伝えるための事業です。各文化施設を県民の防災に対する学びと災害復興の拠点として位置づけるべきです。この点が、今回の指針の変更によって揺るがせになるのではないかとの強い懸念があります。
(4)何よりも重要なのは、県全体の文化政策のグランドデザインの中で各施設の役割を位置づけることです。短期的な収益性にのみこだわって文化政策を展開することは現在では避けられています。文化施設は地域の記憶を守り、教育・調査機能を担う社会教育施設です。県は高知らしい文化資源を大切にする理念を基本に据え、各文化施設の専門性を尊重した運営を支援すべきです。
(5)現行案の通り指針が改定されたとしても、県民や関係者との対話の場を設け、計画の目的等を丁寧に説明することが信頼形成につながります。現場の知見を反映させた議論を重ね、文化の持続と軸にする方針とすべきです。県は情報提供の在り方を見直し、根拠資料を公開して議論をオープンに進める必要があります。その姿勢こそが、県民や高知県に関心を持っているの世界中の人々の高知の文化に対する関心を一層高めるはずです。